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Logos 今月の言葉

201910
中島公園の一角に「北海道文学館」(2階建て)があります。常設には、北海道ゆかりの作家・文学者たちの活動が展示されています。また2階は図書室となっていて、ここにも作品の全集本が常設されて、自由に閲覧、読書ができるようになっています。
 ここで8月末から11月までの期間「保坂正康の仕事」としてー昭和史との対話―と副題の特別展示がありました。
 センターの講座に、つねづね参加されているご常連にご案内して、御一緒に見学、その後喫茶コーナー(ここも常設されていて、休憩ができます。)で、ちょっとした学習会をしようと企画しました。阿部政男もと北星学園大学教授に協力していただきました。快く同道してくださいました。
 参加者は、センター講座を聴講する人たちに加えて、その友人知人がくわわりました。文学館に初めてという方もおられます。また昭和元年生まれの方、昭和にどっぷりと色付けされた方、昭和の後期生まれで戦争を知らない世代のかたも参加されました。
 「昭和史には、歴史のすべてが詰まっている」との標語でしたが、わたしも、昭和元年から平成までの歴史を一覧して、その年年の、主要な案件を取り出してプリントを用意していましたが、戦争と平和、世相とその変化、突発的は事件、政治の混迷、などとりだしていましたが、それ以上の、昭和の世相に対して、保坂さんが取り組んでいた仕事に触れることができました。
 保坂さんの作品、単行本を網羅するようにして、展示、こんなにも多くの作品を出版されていることを初めて知りました。さらに、いくつかの原稿が展示されています。ワープロではなく、丁寧にペン字で原稿用紙を埋めておられます。原稿には、まよいのない筆致が感じられます。書き足し、訂正がほとんどありません。削除は全くと言ってよいほどありません。
 時代のさなかでの体験を、知見に照らしての反芻、そして思索を繰り返しながら吟味して、ようやく一度頭脳の中で整理してきた成果でしょう。
 さて一通り見学してロビーで、コーヒーを注文していますと川端幸子さんが見当たりません。展示室のほうにもどって探しますと、おひとりで、なんとまだ展示されたガラスケースのなかをかがみこんでみておられます。
 川端さんは、お生まれは大正15年、すぐ昭和になった世代です。戦前の日本がアジアで活発に活動していた時代、戦争のなかで銀行員として中国にわたり、仕事をして、やがて敗戦。敗戦の中での苦難から、故国への米軍による引き上げ、戦後の日本再建の時代の中でいきてこられました。まさしくご自分の時代をもう一度、保坂さんお仕事の中でどのようになっていたかを調べておられたのです。
 参加者のなかの戦後世代の感想は、昭和は、身を震わせるような、希望のない時代であったように思います。学校でおそわらなかったことがたくさんあって頭が混乱しています、との感想です。
この特別展が、どのような世代が関心をもったか、若い世代は、見学してくれたのだろうか、そんなことを思いながら、学習がひとを深くするとの思いで帰路につきました。  雨貝行麿