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Logos 今月の言葉

2019年9月
最近、札幌地方裁判所に、裁判傍聴に出かけてきました。裁判員裁判です。裁判員裁判は今年で10年目を迎えました。傍聴したのは、地方で起こった、いわゆる殺人事件の審理です。
札幌地方裁判所は高等裁判所と一緒の建物です。明るい陽射しでしたが、正面玄関の前の広い空間がでむかえます。セキュリテイ・チェックも警備員たちによって、親切に手際よくおこなわれ、警戒感がありません。昔の言葉でいえば、「民主的な」佇まいです。戦後70年、いまでは「いかめしい、お白砂」のばではありません。
 入口の広い空間に、壁面があり、そこに午前9時、当日の裁判審理の要件と時間・場所が掲示されます。当該の事案のフロアーにエレヴェーターで行きますと、そこに椅子があり開廷時間まで待ち合せます。傍聴人の誰何や記名をする必要はありません。ただ、普通の市民としての行動が期待されます。大声をあげたり、写真を撮ったりすることが禁じられると注意書きされています。廷内は明るく、開放的で、傍聴人と裁判当事者との間には、低い柵がある程度で目障りになる造作はありません。

初めに傍聴人が後ろの指定の座席に任意に座ります。被告人が廷吏に誘導されて入廷し、その後審理を担当する検事、弁護人、書記官、速記者が所定の位置、つまり検事は向かって右、弁護人は左、そして裁判官が正面、そしてそのわきに裁判員たち入廷すると、傍聴人は全員起立して挨拶することから裁判が開始されます。今回は、裁判員裁判でしたので、正面裁判官の机に6名の方がたが着席しまして、2名の裁判官が補助につくという体裁です。

初めに加害者が証人席につきますと宣誓をします。そして事件の当事者、加害者が被害者に対して何をしたか、その結果がどういう事態に陥ったか、物的証拠品を提示して、いかなる結果が生じたか、を映像、道具等とともに提示されます。かなり詳細です。加害者によってもたらされた被害者の全体状況が示されます。裁判員という普通の市民にとっては、時には衝撃的映像が提示されますので「トラウマ」になる場合があるといわれます。
わたしは2回目の審理と、翌日の証人質疑、この場合は加害者に精神疾患があるか否かの審理が行われました。検察側が申請した精神科医と弁護人側が申請した精神科医が証言しました。検察側の精神科医は加害者に精神疾患はない、としましたが弁護人側は精神疾患ありと相互に相反する診断がなされました。 それぞれの診断がなされた経緯を検察・弁護がわから質疑が行われました。
審理の過程で裁判員からも加害者に対して質問が数回ありました。 
裁判員は、その審理の過程で、1、質問する。2.意見を言う。3.意見を変える。ということを奨励されます。ほんとうに、徹底した審議、討論をする、ということが社会生活上、市民としては心しておかねばならないことですね。普段からそのようなことを心して実行することをしないといけませんね。
日本では、長い間「お上まかせ」、「沈黙は金」などといって、おしゃべりは敬遠されますが、相当の時間を割かねばなりません。また多忙を理由に裁判員を敬遠するむきもあります。しかし、裁判員として参加した方がたの8割が、この経験はよかったと評価しているとのことです。新しい経験は、人間を活性化させますね。

                                     雨貝行麿