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Logos 今月の言葉

 20197月、8月  2019年「平和のいのり」コンサートあたり
アイリッシュハープと「フィンランデア」の演奏のことなど

1.アイリッシュハープ
ハープは紀元前から、人々の生活とともにある身近な楽器です。糸でその響きを板に伝え増幅すると柔らかな音色が出ます。その柔らかさがひとのこころを癒すのでしょう。旧約聖書のなかでサウロという王様が病んだ時、若いダヴィデがハープで王様を癒したと記されています(サムエル記上 16;23。またサムエル記下6;5)。
今日奏でられるアイリッシュハープは、言い伝えではヨーロッパの先住民ケルトの人たちが紀元前6世紀からすでに持っていましたが、ケルトが駆逐されるとすたれていきました。
12世紀ごろ再び甦り、アイルランドではカトリックの家庭での音楽として親しまれていたと伝えられています。
しかし17世紀イングランド名誉革命のときピューリタンの軍隊がアイルランドを制圧するとかれらはアイルランドの人々に「地獄に行くかコナハトへ行くか」といい彼らをコナハト(荒廃地のこと)に追放しました。ピューリタン革命の暗黒面です。わたしどもはピューリタン革命の明るい面しか見ていませんでしたが、じつは、ピューリタンは当時にあっては、いわば有力な社会的ステータスになり、同時に他方ではカトリックに対して苛烈な方策をとりました。アイルランドにおける宗教的対立の原因にもなり、今日にまでも深い禍根となっています。昨今、イギリスのEU離脱問題でも、かつての、この対立が今でも、とても懸念されているのです。信仰という心の問題が弾圧の対象になったのですから。
 さて、アイルランドの人々は父祖からの信仰を守り、追放された地でハープによって癒されたと伝えられています。 
 18世紀になると宗教騒乱が落ち着きアイルランドのベルファストでハープのフェステヴァルが行われましたがその演奏は細々としたものでした。
 20世紀になるとアイルランド、ダブリンの女子修道院でハープが復元され教えられるようになりました。やがて「教則本」ができるとその楽器が甦ることになりました。
  2002年アイルランド歴史ハープ協会が設立されてトリニティ・カレッジで保存されていたハープの復元がなされてハープ演奏が確実なものになってきました。
 さて、日本では、2008年に東京、京都でコンサートが開催されて愛好者がふえ、2016年東京明治学院キリスト教研究所主催のレクチャーコンサートが 白金アートホールで開催されました。 
 いま、戦後再建の基礎となるヨーロッパ連合に亀裂が起き始めています。イギリスの連合離脱が目前になりつつあります。その象徴的なことの一つがアイルランドとイギリスの確執です。これからの世界の平和の行く末に注目したいのです。

今回当センターでの「平和のいのり」を祈念したいと思います。

                                      雨貝行麿