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Logos 今月の言葉

20195
最近、白水社から翻訳ですが「第2次世界大戦」にまつわる書物が出版されはじめています。大戦は、ヨーロッパでは市民の、市民を巻き込んだ戦乱ですからその総括には50年が必要だったのでしょう。
なかでも東欧の共産主義化が、民主主義ではなく権力によって実施され、それが崩壊してかなりの資料が閲覧できるようになって当時の「タブー」が破られて、支配的なイデオロギーから自由になった今歴史家たちが書きだしています。
なかでも『鉄のカーテン』上下2巻は1945年から47年にかけてのドイツのナチ政権崩壊直後からの、ソ連軍による東ヨーロッパ「解放」がどのようにおこなわれていくか、かなり克明に描かれています。対象はポーランド、ハンガリー、チェコスロヴァキア、そして東ドイツ地域です。スターリンに対する絶対的な称賛「神格化」と東ヨーロッパの「植民地化」、各国に対する共産主義体制への移行を実に生き生きと解説します。当時、「共産主義イデオロギー」が、民主主義に基盤を置かないで、権力によってなされて、非人間的な状況を生み、それが拡大していったかを個々の事件を叙述しています。
さて、このような時代のなかで生きた東ドイツの高校生たちのやや過酷なエピソードが映画になりました。
『僕たちは希望という名の列車に乗った。』2018年ドイツで作られました。原作はデートリッヒ・ガルスカ『沈黙する教室 1956年東ドイツ-自由のために国境を越えた高校生たちの真実の物語』、監督・脚本はラース・クラウメ(『アイヒマンを追え!ナチスがもっとも畏れた男』をつくる)。
物語、そして真実の話は、1956年の12月の高校の教室で始まります。
その1か月前東となりのハンガリーで市民たちがソ連の支配に対して反乱を起こします。民主的な主張が、共産党支配、その背後のあるソ連に対して、民族の自立を主張したものでした。駐留するソ連軍に対する武力闘争になり、多くの犠牲者がでます。著名なサッカー選手が死んだという、しかも聴取が禁じられている「自由アメリカ放送」の報道に高校生たちは誰言うこともなく一緒になって追悼したいという思いになり、そこで授業が始まるとき5分間黙とうしました。(映画では2分の黙とうとしています。)
すでに1953年スターリンの死後、6月東ドイツで共産党支配に対する反乱がおこりました。ソ連軍による弾圧の後政権は民衆に監視の目を向け始めます。そんな時に高校生がハンガリーの反乱に連帯したということになり、これを政権は政治的意味をもつと判断しました。
この「政治的反乱」それは「反革命」だとして権力は生徒の中での言い出しっぺを探し始めました。権力は「群学務局」が北ドイツの小さな町の、高校生は12学年生、男子15人女子5人、翌年アビトァ(大学入学検定試験)を受ける生徒たち一人一人に圧力をかけました、誰だ?さらに一人一人を尋問する。しかし、誰も言わない。。。書物は『沈黙する』としているがこれは「黙とう」と「皆が沈黙した」とのかけ合わせをしています。
終に、権力はクラス全員20名全員がアビトァを受験させないと告げられます。(次)

                                      雨貝行麿