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Logos 今月の言葉

20132月  エルゼ条約50周年 

2013122日ドイツとフランスが締結したいわゆるエルゼ条約(独仏協力条約)の調

印から50周年をむかえました。この条約は、19世紀以来ドイツとフランスとが隣同士で

戦争を繰り返してきたことを将来にわたっては放棄すること、そのために「和解」の土台

をつくりだそうとしたのです。19世紀から20世紀は民族国家の成立と繁栄、破壊と殺

戮、それに続く東西冷戦の時代の最中ですからそれぞれの国家の世界情勢におけるくびき

のなかで政治判断、妥協を含みました。しかし外交・軍事そして青少年教育の分野で顕著

な働きが継続され、「和解」はほんものの成果をうみだしています。

 普仏戦争、第1次大戦、第2次大戦、その後60年間ヨーロッパで東西「冷戦」でも戦争

を避けることをしてきました。ヨーロッパ中央にある独仏両国の「和解」の努力です。し

かも今では「危機」がいわれながらも「ヨーロッパ連合」が維持され、もの、ひと、情報

が自由に往来でき、平和的秩序が保たれてきています。さらにはこの条約によってすでに

相互に青少年事務所を運営して両国750万の青年たちが交流し、言語をまなぶ組織もでき、

EUの組織ともあいまって高等教育における交流がなされ、相互の自己主張のために困窮し

た時代を経て、独仏両国に共通する歴史教科書を作成・使用する時代に到り、行政の分野

でも共同修士課程がもうけられています。姉妹都市提携では2200以上の数にのぼり、89

年には独仏合同旅団が創設されて6000人の兵士たちが「ヤー」と「ウィ」と号令をかけあ

うことになっています。

 わたしは数年前、フランスの東北部、ディジョンに近いところラーンスに献堂されてい

るゴシック様式(1211年)のノートルダム大聖堂をたずねたことがあります。この聖堂の

入口に飾られている天使像には今日にまで中世以来の彩色が残るばかりでなく微笑んでい

ることで知られています。その微笑をうけて身廊を歩んでいきますと足もとの小さな床石

に「ここでクローヴィスが洗礼を受けた。496年」と刻まれていました。

 ローマ帝国の末期です。メロヴィング朝フランク王国での出来事の歴史を示しています。

キリスト教の栄光ともいわれます。

 その後この聖堂ではジャンヌ・ダルクがフランス王シャルル7世に戴冠式に参列したと

ころで、歴代フランス王の戴冠式、すなわち大司教からの王冠を戴くところでした。

 この聖堂の内部の右側に壁には大きな記念碑ともいうべき出来事がしめされています。

エルゼ条約締結を記念し1963年この礼拝堂で当時のフランス大統領シャルル・ドゴールと

ドイツ連邦共和国首相コンラート・アデナウアーが共に「和解のためのミサ」にあずかっ

たと示されています(ちなみにアデナウアーはカトリック教徒です)。

 10年前湾岸戦争でアメリカ合衆国はイラク攻撃を臨み、ヨーロッパの国々のなかでこれ

の協力・参戦した国のあるなかで、独仏ともこれに参加しませんでした。アメリカの国防

長官は「旧いヨーロッパ」と揶揄しましたが、この時独仏協力条約40周年でした。

昨年ノーベル平和賞はヨーロッパ連合が受けました。

 「和解」と「平和」は尊い神のご意志です。しかし東アジアでは今日「猜疑と不信」が

広がりつつあります。
                                      雨貝行麿
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