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Logos 今月の言葉


2015年 11月 館長からのメッセージ
  
 

 

 

 

 最近、社会福祉協議会で活動している方とお会いしました。「社会福祉」という考え方とその実施は大きく進んでいます。かって日本で「社会」という考え方も、その「福祉」という考え方もなかなか育ちませんでした。そこで民間活力によって、有志の方々がその働きを担ってきました。
 しかし国際的な状況による刺激もあり、国家、地方公共団体が「社会福祉」を公的施策のなかに置きました。以来日本の社会福祉は「飛躍的」進展しました。新たな施策がこれほどの進展をみることはとてもすばらしいことです。

 「社会福祉」の先進国はスウェエーデン、オランダ、デンマークなどと言われてきました。高負担、高福祉といわれて、日本のモデルと言われる場合があります。

 オランダでは、他人に頼らなければならない場合、例えば医療など「家庭医」の制度とそれにかかわる人々は「すべて」です。ひとり一人が家庭医と契約しています。およそ15分ほどの最寄りで、しかも医療関係者たちは保険、介護、福祉の働き手たちと連携をしています。人々の側も、困った時には、家族に世話になることと考えるよりも社会的連携の中での働きに相談することが普通です。
 しかし、少し考えてみますと、オランダやデンマークは小さな人口です。オランダは1700万、デンマークは500万です。しかも昔から周りから苦しめられた歴史をもっていますから、お互いに小さな力をもちよって、寄せ合って社会をつくっています。弱いもの、小さいものを大切にしていかないと共倒れになるところです。ですから日本のモデルになりません。
 それでは他のヨーロッパの国々はどうでしょうか。高齢化が進んでいて社会福祉の施策が似ているのはドイツです。人口は8千万、大所帯です。日本より少し先に歩いて、試行錯誤しているようです。この「試行錯誤」つまり「やってみて、少し違うと気づいてやり直す」ことです。やり直すときに施策の方からだけではなく市民の側にも施策の変更に対して理解する許容力があることです。施策の側で説明をして理解してもらう、という姿勢があるからでしょう。 政府は国家予算の面で社会福祉に割り当てが困難なので、民間活力に期待しています。行政が一方的に措置義務を負うのではなく、利用者の選択によりますから、それだけ幅が広くなる。すると格差も生じることになります。しかし市民のがわでそれを望むのでしょう。そこに自由企業として民間活力が参入する余地があります。日本の民間活力は、ある事業に対して財政上有利、簡単に言えば「儲かる」ことは必要条件です。福祉が、企業の投機の対象になるという面があります。
 ドイツの福祉は、保健、医療、介護を含めて、キリスト教の活動によることが70パーセントを超えます。歴史的にも実に長い実績とさまざまな資産をもっています。民間企業が新たに参入する動機がとても低いということができます。
 キリスト教の活動は、本来は「宗教の宣教」ということですが、そこに人々が参加するというよりもそのキリスト教の働きとしての医療や福祉に参加する方が市民の側にとっては「容易」で、しかも「働き甲斐」が実感できるのでしょう。しかも社会的な高齢化を見れば、医療や福祉(介護)からの働き人の要請が高いのです。
 いま日本では福祉や介護で仕事をすることが平均化しています。篤志人々によるのではなく、だれでも出来る働きだという考えが広がっています。
 「ぬくもりのある近所」何かあるときには「遠い親戚より近くの他人」でしょう。地域の社会福祉協議会の働き人たちによって、また新たな試みが企画されていくでしょう。


                                     雨貝行麿

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