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Logos 今月の言葉


2015年 1月 館長からのメッセージ
  

12月末、シトー会に属する修道院を訪問しました。バルセロナ郊外のポブレートです。
12世紀のその基礎がおかれ、かっては3重の壁で禁域をまもり、修道生活をする方々とその生活を支援する人びと(助修士)の方々によって保たれ、やや北東にアラゴンがありますので、その王家の経済を支援したこともある施設です。カタロニアーアラゴン王家の墓碑が10点以上その礼拝堂祭壇近くにしつらえられています。
11世紀フランス、ブルゴーニュに発祥した修道会がクレルボーのベルナルドスと30名の修道士たちがイエス・キリストがめざした修道の生活新たに営むためにシトーの地に移り「愛の憲章」を作成してその目的を明記しました。修道士たちは土木(特に土地改良)農業(薬草も)そして建築(簡素を旨とする)に、その理念を各地に伝播させていきました。彼らの労働の果実は伝承されて優れた知識・技能をもつ集団となり、いまでもその成果は評価されています。醸造、薬草、農事、そして今日もその遺構としての修道院建築です。清廉を旨としましたので近隣が飢餓に陥ると救済の手をさしのべましたので人びとは、彼らの洗いざらしの白の修道衣をみて「天使のようだ」と語ったと伝えられます。その後急速に発展し、フランス革命によって修道士たちがその地から追放されますとかえって各地に種をまくことになりました。スイスやドイツです。19世紀初めにはアメリカ、そして改革されたトラピストとして日本に伝えられたのです。
さてポブレートの修道院は歴史に翻弄されます。フランス革命の後市民戦争、そしてフランコ政権です。しかし、いまも30名の修道士たちと共に聖務日課をしていますが、かっての禁域ではなく開放され多くの人々を招いています。12月わたしは、修道院に隣接したホテルに宿泊しました。到着が夜になったにも拘わらず快く迎えられ、温かな雰囲気に満たされて、修道院の醸造するワインと独特の風味のあるソースで調理された食事を楽しみました。
朝、食事の前の12世紀に建設された礼拝堂での聖務日課に参加することができました。修道士お一人が参加するわたしどもに二つの楽譜を微笑んで渡して、「これはグレゴリオ、これはカタロニア語の賛歌」と伝えてくださいました。大きな、しかし質素な作りの礼拝堂の祭壇、聖歌隊席で「天使のような白衣」をまとった修道士たちの賛歌は朝にしじまに天に伸びていきます。しばらくその賛歌に身をさらしていました。ここはカタロニアです。
10時から構内案内がなされますと平日でも20人ほどの若い世代の人々が参加しています。回廊は12世紀と14世紀のボールトで支えられたもの、途中シトー会の特徴噴泉が清水を噴出しています。庭には大きな糸杉が3本そびえ、天空から明るい日差しが入ります。
祭壇は16世紀カタロニア・ルネサンスの時透きとおるアラバスターでイエスさまを抱くマリアさまが彫琢されています。
16世紀に造られた図書館内部の天井は低くしつらえられて、書棚を垣間見たところ現代の画集がおかれていて楽しい雰囲気を感じました。2階の、かって寝室はもう陽がたっぷりとはいって早い朝の日射しを感じます。
2階の屋根伝いに歩きますと周りはいまも農地が豊かに展開してところどころに農家が点在しています。
生涯の時間に、こんな瞬間をそなえられたことを感謝しました。
                                     雨貝行麿

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