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Logos 今月の言葉


2014年 8月 館長からのメッセージ 
 

北海道クリスチャンセンターが企画して『和解と平和再建の旅 ドイツ9日間』を実施しました。平均年齢63歳、13名の旅でした。
 ベルリン、ポツダム、ウイッテンベルク、ライプツィヒ、ドレスデン、ニュンルンベルク、ローテンブルクそしてミュンヘンのゆかりあるところを訪れました。

 ドイツが第
2次大戦を引き起こし、ヨーロッパ全域のみならず世界各地に殺戮と破壊をもたらした1939年以来、4年半後、ドイツの人々は、ようやく戦争が終結したと思うまもなく東西の冷戦時代を肌身で経験して半世紀、その間の実に懸命な政治思想とその実際、周辺9カ国のみならずソ連と東ドイツという専制的な支配者との軋轢のなかで錬磨されて戦争をしない新しい世界秩序、平和と民主主義の時代をつくりだす不撓不屈の健全な精神を陶冶しつづけてきました。

 その成果は
1989年のドイツ再統一の際の人々の知恵として結晶したように見られます。

 そのような現実に、すでに20年を経過していましたが、今回、一つでも学ぶべきことを自分の目でみつけるという期待と熱意で旅をしてきました。
 旅は、参加した一人ひとりに、期待以上の成果を与えられました。また、すこし短くてよいので出かけたいとの感想をもいただきました。
 ベルリンからはじめました。数回にわけて、順をおってお話ししましょう。
 宿泊したホテルが、皇帝ヴィルヘルム記念教会の近くでしたの、そこを拠点にしてブランデンブルク門にまわり、ユダヤ人犠牲者記念館にいきました。
 そこはかって、ナチスの時代には総統官邸があり、各種官庁が並んでいたところでしたがベルリン市街戦で破壊された後、長い間更地になっていました。やや起伏のある土地に、ナチ支配の時代にユダヤ人、シンテイ・ロマの人々、同性愛の人たちが計画的に殺害されつづけたことを忘れない、語り続けて、繰り返してはならないことを祈念して、2005年に記念構築物を建設しました。
 やや起伏のある敷地全体およそ19000mの方形の土地に灰色のコンクリート製グリット、幅はおよそ1メートル、横幅は大小、また高低さまざまに2711個を並べられ、その地下に情報センターが造られています。大戦中に殺害されたおよそ600万人といわれる人びとを忘れないという意志の表れです。
 地下の情報センターには3メートルほどの高さの静謐な暗い空間に、収容所に行く途中、また収容所から届いた手紙、応急の紙片が並べられています。「パパ、愛している。」「これから何が起こるかわからないけれど、生きていく。」。次の部屋には、殺された一人ひとりの名前と生誕したところ結婚して子供が6人、その時の記念写真が映し出され、家具師として生活を営んでアウシュヴィッツでその生涯をおえた、その個人歴が語られるのです。聞き入っていると、胸がしめつけられ、涙が滲みます。
 現代の身なりをした若い人たちが、一つひとつの紙片、手紙の断片をじっと読んでいます。ひとり一人の来歴に耳をすませ、かっての記念の撮られた写真に目をこらしています。
 殺害されたのが600万といいますが、そこにはたとえようのないひとり一人の尊い生命と人を思う愛があったということを繰り返し繰り返し、静かに語りだすのです。地下から外に出て、ちょっと視線をあげますと、その視界には連邦議会議事堂のガラス張りのドームがはいってきます。ドイツ連邦はいまなお過去をわすれない、忘れてはならないとしているのでしょう。戦後60年になってこの記念碑は建設されているのです。

                                     雨貝行麿

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