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Logos 今月の言葉

20137月 
 先に上げたBarbara Beuys女史はケルンで歴史、社会学、哲学を学びジャーナリストでドイツなかんずくユダヤ人の歴史と反戦の歴史、それにドイツの歴史上の女性たちの人物史を書いています。歴史とはいっても今日もなお、女性たち、虐げられた人びとがいることに鋭い目を向けています。ミュンヘンの大学生の反戦活動においてもっとも若い21歳のゾフィーはその生涯のふしめふしめをどう選んでいたか、それがテーマです。

さてゾフィーたちの活動を知った身近な者が「命の危険をさらして、あなたたちがなぜしなければならないの?」との問いかけに「ドイツ民族が錯乱しているときに、傍観も沈黙もゆるされない。」「わたしたちが今しなければ後にだれもいなかったのかとそう問われる」そう彼らは応えました。ひとは良心的に生きることを知りながら、その傍らを通り過ぎる。彼らは、ただ、その時代の生かされて、良心的に生きること、このことを実行したのです。

1943218日、ハンスとゾフィーは反戦と自由を主張し、決起をうながすパンフレットを大学本館のバルコニーからちらしました。直ちに発覚、ゲシュタポに逮捕され家宅捜索の結果、多くの青年たちが逮捕されました。ナチスは、この背後に相当数の賛同者がいるとみて直ちに反逆罪で起訴、判決を引き出して処刑しました。誰もが25歳を超えない有為の青年たちでした。

行動には稚拙の恨みがあります。しかし、その一年半後19447月国防軍をまきこむ大規模なヒトラー暗殺事件が起こります。しかしこれさえもできませんでした。大規模な報復の処刑が実施されました。

選挙で民主的に選ばれたヒトラーを政権から合法的に追放することができませんでした。彼の自殺によってしか彼から解放されることはできませんでした。「民主主義」は「民主的方法によって」崩壊する。民主主義は「正義のもとに仕える」ことを過去の歴史から学びたいものです。

今では、ミュンヘン大学本館にショル兄妹とその仲間たち、それに彼らに助言した大学教授ハンス・フーバーの彫像が入館者をむかえます。また記念室が整えられ、彼らの事績が年代を追って展示され、そこに多くの青年たちが訪れて、食い入るように展示されている記述を読んでいます。

ミュンヘン大学の本館前の写真には、ショルたちが当時配布しようとしたパンフレットを、今では金属板に転写し、記念として本館前庭の石畳に組み込まれています。その前庭は「ショル兄妹広場」と名付けられ、標示がされています。70年前、彼らがここで決行したことを心に刻むためです。ドイツは戦後60年、現在、ヨーロッパでノーベル平和賞(2012年)を受賞したEUの中心的役割をになっています。

人の行動に完璧なことはないでしょう。彼らの行動が稚拙で、たといあっても「やむにやまない」行動がありましょう。未曾有の苛酷で悲惨な経験をしたのち、そこから学ぶべきことを掬いださないとすべてが無為になるということでしょうか。

「過去に目を閉ざす者は、現在をも見ることができない。」(ワイツゼッカー)至言です。                
                                              
雨貝行麿

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